歯周病について
歯周病の初期の症状は歯茎が腫れたり多少出血する程度であるため、病状に気づかない方も多くいらっしゃいます。そのため痛みや腫れを感じ気づいたころには、歯を支える骨に炎症、吸収が広がり、手遅れとなることも少なくありません。
『歯磨きフロスを禁止した実験では、10日〜21日で歯肉炎が発症した』(Loe 1965)という論文もあります。
歯周病検査で出血がある箇所は10日以上磨けていないくらいのダメージがあるということです。
同じ論文では歯肉炎は歯磨き再開後1週間で消失したともあります。
しっかり歯を磨くと出血箇所は1週間ほどで改善するということです。
歯肉炎と歯周炎
歯周病は、歯肉炎と歯周炎に分けられます。
症状の軽い歯肉炎の段階では気づかないことも多く、症状の重い歯周炎へと移行して初めて気づくという方もいらっしゃいます。
当院では治療前に、レントゲンや歯科用CTで歯槽骨の状態を確認し、さらには歯周ポケットの検査、揺れ具合の診査などを行います。
歯周病の病変は目視のみで正確に診査する事が難しいため、「プローブ」という専用の器具を使用ししっかりと記録をとります。
そのうえで、歯周病の治療計画を立てていきます。
歯肉炎とその治療法
歯肉炎では歯周病の進行は歯周囲歯茎の炎症のみにとどまっています。
毎日歯磨きをしていても、不適切なブラッシングにより磨き残しがあることで歯垢(プラーク)が蓄積します。蓄積された歯垢は放置してしまうと唾液の成分により石灰化して歯石になり、通常の歯磨きでは取り除くことのできない硬さになります。さらに、歯石が溜まった歯の表面はザラザラになるため、より一層汚れや細菌が付着しやすくなります。
歯科衛生士がスケーラーと言う器具を用いて歯の表面の歯石やバイオフィルム(細菌の塊)を徹底的にきれいにする「スケーリング」を行います。
合わせて適切なブラッシングを修得し実践することでおおよそ2週間ほどで病状は改善いたします。
歯周炎とその治療法
歯肉炎に対し、適切な治療を行わないでいると、症状は進行し歯周炎につながります。
歯周炎では歯茎だけではなく歯を支えている骨(歯槽骨)にまで炎症が広がります。
炎症が進行した歯槽骨は吸収され、やがて歯を支えきれなくなります。歯周病が歯を失う原因になるといわれているのはこのためです。
進行してしまった歯周病は深くなった歯周ポケットの内部にまで歯垢や歯石が付着しています。歯肉炎同様スケーリング、ブラッシング指導に加えて歯の根(ルート)をきれいにする「ルートプレーニング」も行っていきます。
ルートプレーニングでは歯周ポケットの奥まで歯垢・歯石を取り除き、根面を滑沢に仕上げます。
それよりもさらに重篤に進行してしまった歯周病に対しては、進行状況によっては歯茎の切開や、歯周病により溶けてしまった骨の回復を行う歯周組織再生治療(リグロス、エムドゲイン)などの外科的な処置が必要な場合もあります。
しかし残念ながら状況によっては抜歯を選択せざるを得ない場合もあります。
歯石は2週間程度でつきはじめます
バイオフィルムの石灰化は12日間で完了しますが、最初の2日間でほぼ半分が完了しています。
歯石形成の早さには、アルカリ性環境、糖類、唾液の性状、人種、性別など様々な要因があります。
歯石を付着させないためにも日々のプラークコントロールはすごく大切です。